季節は巡りて

1/3
前へ
/138ページ
次へ

季節は巡りて

「おい、小僧、それはなんだ。お前まで隠し事をしていたのか!」磯部さんが唾を飛ばしながらわめく。広間全体が揺れそうなくらいの大声だ。 「すまない、お二人さんの件があったからタイミングを見失ったんだ。さっき言ったように俺は朝早く起きたから、当然広間にも一番乗りだったわけだ。いざ広間に入るとテーブルの上にこれがあったんだ。俺はすでに中身を見たんだが、みんなの想像どおり犯人からのメッセージだった。じゃ、中身を読むぞ。『春夏秋冬、季節は巡った。私の計画は終わった。ここに犯行の終結を宣言する』だそうだ」草次さんが読み上げた。  季節は巡った? どういう意味だろう。みんなも頭をひねっている。少なくとも犯人が犯行を重ねるつもりはないらしい。僕たちへの脅迫状は別として。 「あの、それってもう事件は起きないってことですよね?」と天馬さんはキョロキョロ見回しながら確認する。かなり戸惑っているようだった。 「そのメッセージを素直に受け取るならな。でも、犯人の言うことを真に受けていいのか? 油断させて襲撃する可能性もあるだろ」暁は冷静に分析する。 「そもそも『春夏秋冬、季節は巡った』ってどういうことかしら。パッと思いつくのは季節の間での事件――正確には『冬の間』では起きてないけど――のことかしら」薫さんが第一印象を口にする。
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

79人が本棚に入れています
本棚に追加