69人が本棚に入れています
本棚に追加
「おーい、周平、もうすぐ島に着くぞー」暁が僕を呼んだ。
「今行くよー」
そう言うと、僕は暁のいる舳先に向かって歩き出す。
確かに遠くに今回の目的地の離島が見え始めていた。
「夏央も来いよ! いよいよだぜ」
「人がこの絶景に浸っているのに、邪魔するなよ」夏央が暁に言い返す。
「へえ、夏央も感傷的になることもあるんだな。意外だぜ」
「はしゃいでいるだけの誰かさんとは違うんだよ!」
暁と夏央のやりとりは日常茶飯事だ。放っておけばいい。
それに夏央がこの景色に見入っているのも分かる。水面は太陽の光を受けて、燦々と煌めいている。それが間近で見られるのだから、無理もない。
「お前さんら、もうすぐ着くぞー! 身支度を始めておきな!」船長が大声で言う。
島は目の前に迫っており、桟橋と思しきものが見える。島は思っていたより大きかった。そこらへんの野球場の何倍も広そうだ。こう言っては失礼だが船が古ぼけていたので、正直離島もしょぼいものを想像していた。これなら館も立派に違いない。期待で胸が膨らむ。
最初のコメントを投稿しよう!