犯人は――

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「薫さん、ありがとう。そのとおりじゃ。釣部殿の行動はかなり不自然じゃった。そして、荒木殿を探していたにもかかわらず、わざわざ暁殿に席を外してもらって『秋の間』で天馬殿と二人きりになっておる。そうなれば、グループ決めの段階で二人きりになりたかったと考えるべきじゃ」  なるほど。筋がとおっている。だが、なぜそこまでして秋吉さんが天馬さんと二人きりになりたかったのかという疑問が残る。 「そして、さきほど天馬殿と諫早殿の会話を立ち聞きしてしまったのじゃが、天馬殿の話によれば、二人きりになったあと釣部殿が駆け寄ってきたところで意識を失ったとのことじゃ。天馬殿、そうじゃの?」 「ええ、そうです」天馬さんが首肯する。 「さて、二人きりになったタイミングで持病で意識を失うことはないに等しいじゃろう。ここは釣部殿が天馬殿に駆け寄り、なんらかの方法で意識を奪ったと考えるのが妥当じゃろう」  薫さんがガタっと音をたてて立ち上がる。 「ちょっと待って。話がみえないわ。仮にうちの人が天馬さんの意識を奪ったとして、結局殺されたのはうちの人よ。普通逆じゃないかしら。うちの人が天馬さんを殺したのなら話は分からなくもないけれど……」 「確かにその婆さんの言うとおりだ。さっきから話の着地点が見えないぞ。釣部の爺さんが殺されたのが現実だぜ?」  薫さんが暁をにらみつける。 「せめて『おばさん』にしてもらえるかしら。あなたはもう少し言葉に気をつけるべきね」
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