誤解

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誤解

「仮に、仮にだぞ、相棒が犯人だとして、他の事件も説明がつくんだろうな? もし間違いがあれば、ただでは済まさないぞ」草次さんはすごい剣幕だ。 「そのときはどのような処罰でも受けよう。さて、暁殿が犯人だとすると、『春の間』の事件は簡単に説明がつく。自作自演じゃよ」  喜八郎さんはたった一言で『春の間』での事件を片付けた。 「喜八郎さん、待ってちょうだい。暁さんは危うく死ぬところだったのよ。そんなリスクを負ってまで自作自演する必要があるのかしら」  冬美さんは犯人が分かったことで、以前の恐怖心は消えたようだった。 「それは簡単じゃよ。自分で薬量を調整すればすむ話じゃ。気を失えば良いだけの話じゃ。少量でことは足りる。仮に由美子嬢が来なくても自力で起きることは可能じゃよ」 「確かにそのとおりです。本来の睡眠薬の使用方法とは違いますから。そうなると、事前に医療従事者に相談が必要だし、かなり綿密な計画ってことになりますね」由美子さんは看護師の立場から意見を述べる。 「さて、『春の間』の事件はあっさりと解決したわけじゃ」 「おい、それは俺を犯人と仮定すればの話だ! それに俺には『夏の間』の事件のときに、周平と一緒にいたっていうアリバイがあるんだぜ?」暁が噛みつく。
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