誤解

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「暁の言うとおりです。彼は僕と一緒にいましたから、『夏の間』の事件を起こせるはずがありません。そもそも喜八郎さんが僕たち二人は白だって言ったじゃないですか! 矛盾してます!」  喜八郎さんのちぐはぐな言動にイライラした僕は久しぶりに大声で怒鳴った。自分で言うのもなんだが、温厚な僕が怒ることはめったにない。最後に怒鳴ったのは反抗期に母親と言い争ったとき以来だ。 「そうじゃな。そこが一連の事件の肝じゃ。さて、次は『夏の間』での夏央嬢の殺人事件じゃな」 「な、!? 夏央さんは男性じゃないの? 事件が複雑すぎて混乱してませんか」天馬さんが心配する。 「気遣いありがとう。じゃが、心配は無用じゃ。わしはしっかりしておる。夏央嬢は女性じゃ。彼女は出で立ちも立ち振る舞いもボーイッシュじゃったからの。男性と勘違いするのも無理はなかろう。しかし、よく観察しておれば気づくことはできよう。彼女は時間を確認するときはで確認しておったじゃろう。女性特有の行動じゃな」  確かに夏央は口調も男っぽいから、初対面の人には男と間違われることもたびたびあった。彼女は気にしていないようだったが。  それに天馬さんはこの島で初めて会ったのだ、勘違いしても無理はないのかもしれない。草次さんは夏央を呼び捨てで呼んでいたし、由美子さんは「夏央さん」と呼んでいた。誰も「夏央」とは呼んでいないのだ。   「あとは天馬殿はその場におらんかったから知らんじゃろうが、『春の間』での一件のあと、その場にいた者で手荷物検査をしておる。そのとき彼女は女性チームとして同性同士で互いにチェックしておる」 「まさか夏央を男だと勘違いしているやつがいたとはな」暁がポツリと言う。
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