矛盾

1/2
前へ
/138ページ
次へ

矛盾

「さて、本題に戻るとするかの。『夏の間』での事件じゃが、暁殿は諫早殿と一緒に火災報知器の音を聞いておる。現場には着火装置の類はなかったのじゃから、暁殿には犯行は無理じゃ」 「おい待て、爺さん。さっきお前は相棒が犯人だって言ったよな。矛盾しているぞ!」草次さんの怒りはいつ爆発してもおかしくない。いや、すでに爆発している。 「わしは一連の事件が同一人物によるものとは言っておらん。あくまで殿と名指ししただけじゃ」  僕には喜八郎さんの言葉がすぐには理解できなかった。 「『夏の間』での事件は別人による犯行じゃよ。ここで現場に置かれていた『ことわざ辞典』が活きてくるのじゃ。わしらは毎回現場に『ことわざ辞典』があったことで、『犯人はことわざに固執した異常者』だと錯覚しておったのじゃ。ここが暁殿ともう一人の犯人の計画の肝じゃ」 「ええと、この館での一連の事件は単独犯じゃないってことですか? もし仮に共犯者がいても、この島で会うのが初めてですよね。そう簡単にいくのでしょうか」  天馬さんが恐る恐る質問する。
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加