告白

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「俺は夏央と、あいつと付き合っていたんだ。一年くらい前からな。俺は夏央にぞっこんだった。俺たちは性格が似通っていた。それにお互いにアウトドア派で話があった。これは運命だと思ったね」  暁の声が広間に響き渡る。暁は遠い過去を思い出しているのか椅子に深々と座り、視線を上げて目をつぶっている。 「でも、この前ふられたんだ。単にふられたなら、こんなことはしなかったさ。俺に魅力がないんだと諦めもつく。現実は違った。あいつは俺のことを財布としてしか見てなかったんだ。それにあいつには別に彼氏がいたんだ、本命のな。俺は夏央と楽しい時間を過ごすために必死にバイトをした。それはあいつからすれば、養分が大きくなったとしか見えてなかったんだろう。そして、ある日こう言われたんだ。『今までありがとう。新しくもっとお金持ちの人を見つけた。もう付き合ってるんだ。気づいてたか? だから、暁とはこれでおしまいだ』ってな。それにこう続けたんだ。『でも、新しい財布ともすぐにバイバイかもな』。俺はやつが許せなかった。俺のあとにも被害者が出るかと思うと、俺の憎しみは倍増した」  暁は大きなため息をつく。僕は夏央にそんな一面があったとは知らなかった。いつも明るく陽気だから裏表がないと勝手に思い込んでいた。 「それは辛かったの。だからといって理性を失ってしまっては、獣と変わらん」 「老いぼれに何が分かる! 俺はもてあそばれたんだぞ。それも大切な青春時代にな。あんなやつとは出会わなければよかった……」  暁の声には哀愁が含まれていた。僕には彼を慰める言葉が見つからない。 「だからだよ、あいつを焼殺したのは。撲殺じゃあ腹の虫がおさまらなかったんだ。生きながら焼かれる、苦しく死んで欲しかったのさ。まるで魔女が火あぶりにされるようにな」  暁は何かに取り憑かれたかのようだった。 「本当は俺自身が手を下したかったが、アリバイの都合上、釣部の爺さんに任せざるをえなかったんだ。なにせ、動機の面から捜査されれば、真っ先に容疑者候補に挙がるのは俺と周平だ。周平、なんで俺がお前と一緒に火災報知器の音を聞いたか分かるか? あれは俺自身のためではなく、お前のためでもあったんだ。友人が俺の身勝手で冤罪で捕まっちゃあ困るからな。『夏の間』の事件では俺たち二人にアリバイが必要だったんだ」  暁は夏央を計画的に殺した。それは許されることではない。でも、そんななかでも、友人である僕に容疑がかからないように気遣っていたのだ。  
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