告白

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「なるほどのう。だが、どのような事情があろうとも、殺人は許されることではない。法学部生の暁殿ならよく分かるじゃろう?」 「ああ、分かっているさ。許されないだけじゃあない。裁判にかけられれば、下手すれば死刑だろうな」 「じゃあ、うちの人はなんで天馬さんを殺そうとしたのかしら。暁さん、何か知らないかしら」薫さんが尋ねる。 「この館に来てからも散々釣部の爺さんの悪態を聞いてただろ。釣部の爺さんは天馬のことを『我が家の恥』だの『出来損ない』って言っていただろ? 大会社の社長として自分が成功しているんだ、小さな失敗でもプライドが許さなかったんだろうよ。そして、将来的に遺産が天馬にいくことさえ、嫌がっていた。我が家の恥はなかったことにしたい、消し去りたいって言ってたぜ。それが口癖だった。だから、絞殺に決めたのさ。『絞殺は自分の手に殺した感覚が直に伝わるから、ベストだ』ってな」 「どうやら釣部殿も正常に善悪の区別が出来なくなっておったようじゃの。さらに、(あや)め方まで残酷な理由で選んでおる」喜八郎さんは大きなため息をつく。 「じゃあ、やっぱり僕は釣部家の恥なんだ! 失敗作なんだ!」  天馬さんが狂ったように叫ぶ。薫さんが天馬さんを両手で押さえつける。 「天馬さん、落ち着きなさい。確かにあなたはうちの人の前では萎縮して上手く自己表現出来なかったわ。でも、この島に来てから学んだでしょう? あなたは釣部家の恥でも失敗作なんかでもないわ。同世代の人とは上手く付き合えるのよ。ネガティブな考え方に囚われてはダメよ」 「天馬、そのとおりだ。お前は俺たちとは上手くいったじゃないか。一歩前進したんだ。それに俺たちとの関係もこの島で終わりじゃあない。天馬が望むなら、俺たちが支えてやる」草次さんが力強く言う。
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