告白

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「ふむ、この館では悪いことが数多くあったが、良いこともあったようじゃな。天馬殿、友人は一生の支えになる。大事にするのじゃ」喜八郎さんが感慨深く言う。 「あの、感動的な場面で申し訳ないんだけど、僕は暁が秋吉さんとどうやって知り合ったのか気になるんだけど」  これだけはどうしても聞いておきたかった。秋吉さんと出会わなければ、今回の事件を起こさなかったに違いない。 「わしもそれが気になっておった。大会社の社長と一学生。普通は接点がなかろう。さらに言えば、その二人がお互いに殺したい人物がおるなんて、そうあるまいて」 「そういえば、その件はしゃべってなかったな。夏央にふられた直後だった。俺はやけになって、無相応な豪華なバーに行ったんだ。端っこで飲んでいたら、すぐに釣部の爺さんがやってきた。俺の服装がバーと釣り合ってなかったんだろう。釣部の爺さんがこっちに来て言ったんだ。『貴様のような若造が来るところではない』ってね。俺は酒の勢いで言い返した。『失恋したんだ。ほっとけ』ってな」  暁は一息にしゃべる。 「他人の失敗は蜜の味っていうだろ? あいつも俺の話を根掘り葉掘り聞いてきた。俺が夏央を殺したいほど憎んでるって言ったら、『オレも殺したい奴がいる』ときた。それからは奴と意気投合した。そして、俺たちは気づいたんだ。俺たち二人の名前と殺したい相手の名前に春夏秋冬の文字が入っていることに。あとは分かるだろう? 俺たちは新聞に広告を出した。もちろん、俺たちは主催者だ。偶然手に入れたと言って、相手を誘えばいい。この後の説明は不要だな」   「なるほど、そうじゃったか。そうなると、この館の持ち主は釣部殿であろうな。この館はかなり隅々まで整理されておる。特に書庫ではかなり几帳面にジャンル分けをしておる。執念を感じるくらいにの」  そうなると、秋吉さんも小説家を目指していたに違いない。あの書庫の中を見ればよく分かる。辞書が多かったのは、秋吉さんの時代にはスマホという便利なものがなかったからだ。   「釣部殿は一日目の晩餐会で席を決めるとき、磯部殿の方法に激怒しておった。『くじ引きを作るなら定規をあてて線を引いてからハサミできるべき』と苦言を呈しておる。彼の几帳面な性格が分かるエピソードじゃな」  喜八郎さんのセリフを最後に沈黙がその場を支配した。
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