絶望と希望

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絶望と希望

 しばらくの間、誰もしゃべらず、まるで音が消えた世界のようだった。  ふと草次さんが聞く。 「なあ、相棒。お前は俺たちを利用したのか? 俺たちの絆は嘘っぱちだったのか?」 「まさか、そんなわけないだろ。俺は一連の事件で相棒を利用したことはない。誓ってもいい」暁の眼差しは真剣だった。 「それを聞いて安心した。それなら、例え相棒が裁かれようと、俺は相棒に会いにいくぜ。なにせ心の友だからな」草次さんは暁の肩に手をまわしながら言う。  暁と草次さんとのやりとりを見ながら心配になる。暁はああ言っているが、本当に裁かれるまで大人しくしているのだろうか。自暴自棄になって自殺をしないだろうか。    僕は手招きして暁を呼び寄せる。 「どうした、周平? 何か聞きたいことでもあるのか? 話せることは全部話したつもりだが……」  僕はストレートに聞くことにした。 「暁、もしかして自殺しようなんて考えてないよね?」 「まさか。自分の犯した罪の重大さはおれが一番知っている。やりたいことをやってあの世に逃げるなんて卑怯なことはしないさ。それよりも周平、悪いことをしたな。友人を手にかけたんだ。そして、俺も牢獄行きだ。お前は二人の友人を同時に失うことになる」  暁は申し訳なさそうに小声で言う。 「大丈夫じゃないって言えば嘘になる。でも、時間が解決してくれるよ、きっと」  僕は自信がない。果たして僕はこの大きなトラウマを乗り越えることができるのだろうか。
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