寝台列車「北斗星の悲劇」

1/5
前へ
/138ページ
次へ

寝台列車「北斗星の悲劇」

  322d340d-63d8-4c76-a5ec-302c84ff3b91  僕は白い息を吐きながら目当ての家を探していた。以前知り合ったときに住所を教えてもらっている。閑静な住宅街の表札を注意深く見ながら歩く。  ほどなくして、目当ての家を見つけた。表札には「大島」と書かれている。インターフォンを押すと少し間をおいて応答があった。 「おお、諫早殿。久しぶりじゃのう」  懐かしい声が聞こえてくる。 「ご無沙汰しています。喜八郎さんにお話を伺いたくて来ました。アポなしですみません」 「旧知の仲じゃ、気にするでない。今、鍵を開ける。少々待たれよ」  ガチャリと音が聞こえ、目の前の扉が開かれる。小柄で杖をついた老人が現れた。喜八郎さんだ。 「さあ、中に入るのじゃ。最近は寒くてかなわん」  喜八郎さんは体を震わせながら言う。
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加