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「へえ、残りのグループのお出ましか」若い男性が言った。  その若い男性は、僕たちとそんなに年が離れては見えない。二十代前半といったところか。 「俺は夏目草次(なつめそうじ)。俺の親が夏目漱石の大ファンでね。彼の『草枕』から『草』をとって名付けたらしいぜ。まあ、『夏目草石』よりはマシかもな」  夏目さんは自虐的に言いつつ、僕に手を差し出す。彼の苗字には『夏』の字が入っている。彼が当選したに違いない。 「僕は諫早周平っていいます。数日間よろしくお願いします」  夏目さんからはフランクで、暁に近い印象を受ける。握手をしながら、そう思った。 「俺は暁春太郎。あんたとは気が合いそうだ」続いて暁が自己紹介をする。 「お、そう思うか? ちょうど、同じことを考えていたんだ! まあ、よろしくな、相棒」  夏目さんは暁の肩を叩く。もう相棒呼びなのか。二人が意気投合して、バカンスが終わっても交流を続ける未来が見えた。 「こっちは、蝶野夏央。たぶん、相棒と気が合うと思うぜ」  夏央は暁と同じくらい陽気だから、だぶんそうだろう。 「ああ、紹介が遅れたな、こいつは俺の彼女だ」と夏目さん。隣に立った女性を紹介する。 「私、白羽由美子(しらはねゆみこ)っていいます。よろしくね」  夏目さんとは真逆な印象だ。おとなしくて、どちらかと言うと性格は僕に近いものを感じる。一言でまとめるなら、犬顔で愛くるしい印象だ。夏目さんが惚れるのも分かる。 「あれ、相棒たちは二人なのか? 確か二人まで同伴可能だったはずだが……」暁が疑問を口にする。 「必ず三人で来い、ではなかっただろ? 仮にもう一人連れてきたとして、男だったら俺が由美子を取られないか心配するし、逆も同じだ。そこまで野暮じゃないぜ?」  そう言うと夏目さんは白羽さんを抱き寄せる。彼女がいない僕にとっては、その行動がうらやましく感じた。
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