書庫

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「オレは二階にいくぞ。いい部屋を先にとられたくはないんでね。薫、ついてこい」秋吉さんは荷物を持つと勢いよく階段をのぼり始める。 「ええ、分かったわ……天馬さんはご自由にお過ごしください。あの人が近くにいると、楽しめないでしょ?」薫さんはボソッと付け加えた。  なるほど、薫さんは前妻の子・天馬さんの気持ちも分かっているらしい。素敵な親子関係だと思った。 「わしは春夏秋冬の間をもう一度堪能してくるわい。お二人はいかがされるかの?」喜八郎さんが連れの二人に問う。 「俺は散策がてら外観をゆっくり見てくる。さっきはすぐに入ったからな」と言いながら、磯部さんは玄関の方に向かう。 「私はお部屋へ行きますわ。夕食まで、ゆっくり過ごしたいのよ」  どうやら喜八郎さんたちは別行動らしい。 「それで俺たちはどうするよ、相棒」と草次さん。 「まあ、特に行きたいところもないしな……。そうだ、年齢が近い者同士、夏央と由美子さんと一緒にワイワイするのも悪くないな。天馬もどうだ?」暁は続ける。 「誰かさんは……例の書庫に行くんだろ? 本の虫さん」暁がからかう。  僕はうなずいた。読者好きとして書庫と聞いて、行かずにはいられない。 「やっぱりな!」と暁。
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