再び書庫へ

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「みなさま、朝食はお楽しみいただけましたでしょうか」  荒木さんがやって来た。ナイスタイミングだ。僕はホッと胸をなでおろす。 「小僧、今にみてろ。前言撤回させてやる」秋吉さんが捨て台詞を吐く。  磯部さんと秋吉さんの会話には辟易としていたので、朝食が終わった時は二人の会話から解放されてホッとした。脱兎のごとく席を離れた。  朝食後は昨日の若者ものグループの談笑に喜八郎さんと冬美さんが加わっていた。 「なあ、爺さん。法学部出身なんだろ? 卒論の題材は何にしたんだ?」 「確かに気になるな」  暁と夏央が喜八郎さんを質問攻めにする。 「この歳になると、忘れっぽくなってな。さすがに題材は覚えておらん」喜八郎さんは続ける。 「しかし、自分の力で考えることが大切じゃ。わしがアドバイスできるのは、それくだいじゃ。『考える力』を養うことは、後々の人生に活きてくるからの」 「ちぇ、自分で考えろときたか。使えないな」 「暁、それは言い過ぎだよ」僕は暁をいさめる。  実際問題、喜八郎さんのアドバイスは適切だと思った。「考える力」、それは社会人になっても大事な資質の一つだ。社会人に限らず、人間として大事なものだ。「考える力」があれば、ネットの情報など周りの意見を俯瞰して考えて、流されなくなる。空気を読み過ぎる僕には金言だった。
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