再び書庫へ

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「僕はそろそろ、抜けるよ。書庫に行きたいから」 「そう言うと思ったぜ。よっ、本の虫!」暁が茶化す。 「でも、自宅にもかなりの本を持っているんだよね? やっぱり、ここの書庫はすごいの?」天馬さんが尋ねる。 「すごいなんてものじゃないよ。そこらへんの図書館以上の所蔵量だよ。それに……」  僕は天馬さんの質問に答えていたが、途中でやめた。自分の想いを熱弁し過ぎて、恥ずかしくなった。 「ともかく、書庫へ行ってくるよ」 書庫へ着くと、目当てのタロットの本を探す。昨日のタロット占いを受けて、興味が湧いたのだ。確か二階に「趣味」の棚があった。きっとそこにあるに違いない。螺旋階段をのぼると、早速目当ての棚へ向かった。さて、どこにあるかな。  かなりの本があるので、探すのに苦労した。十分ほど経って諦めかかた時だった。やっと見つけた。『初心者のタロット占い』、これだ。  椅子に腰かけると、僕はむさぼるように読んだ。本を読む手が止まらない。とても興味深い内容だった。昨日、由美子さんのやっていた方法以外にも、色々な手法があるらしい。あまりに面白かったので、時間があっという間に過ぎていた。もっと深く知りたい、そう思ったので本腰を入れるために自室に持ち帰ることにした。あとでゆっくり読めばいい。  階段をおりる途中、壁面の棚を見たときだった。大量にあった辞書の中から一冊が消えて、空白ができていた。昨日まではあったはずだ。僕以外にも読書好きがいるのだろうか? それは考えにくい。辞書は読書するためのものではない。それに今はネットの時代だ。辞書がなくても、スマホを使えばすぐに答えがでる。不思議に思いながらも、僕は書庫をあとにした。  自室に戻ると、本をナイトテーブルに置く。続きは寝る前に読もう。まだ日にちもある。そう思ったときだった。 「うわあぁぁあ」  悲鳴が静寂を切り裂いた。
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