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「死」のカード
「そう言えば、偶然にも由美子さんの占いどおりになりそうだったな。俺の未来は『死』のカードだった」暁は自嘲する。
「偶然だよ、偶然。でも、こういうこともあるんだね。占いを信じる人の気持ちが分かった気がする」
僕は超常現象や宇宙人の類は信じていないが、今回ばかりは少し不気味だった。
「本当に偶然か? 由美子さんが俺の占いをしたときに、何かしらのトリックを使って、未来の箇所に『死』のカードを持ってきた可能性だってある。ほら、トランプを使ったマジックであるだろ。一番上のカードをうまい具合に自分の思い通りに操作して、あたかも超能力に見せかけるやつ。あれの応用を使えば可能じゃないか?」
「でもよ、それを使ったとして、由美子さんにメリットはあるのか? まさか自分で犯行を予告していたとでも言いたいのか? それじゃあ、『塔』のカードは何を意味しているんだ?」夏央が暁に異を唱える。
「夏央、必ずしも全員のカードでそのトリックを使う必要はない。俺が標的であれば、俺のときだけトリックを使えばいい」
「まあまあ、二人とも落ち着きなよ。冷静にいこうよ冷静に。僕の考えでは『死』のカードの件は偶然だと思うよ。だって由美子さんの犯行なら、わざわざ必死に助けるわけないから」僕はとりなす。
「まあ、そう言われればそうか。ただ、相棒がいたから助けざるを得なかったという可能性もある。看護師であることを知っているからな。まあ、可能性としてはないに等しいが」と暁。
「なんにせよ、警察が来ればあっという間に解決するよ。もうそろそろ昼食の時間だし、広間に行こう。みんなで考えれば、いい案も思いつくかもしれないし」
僕は空元気を出して言った。
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