「死」のカード

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「しかし、状況は悪い方向へ向かっておる。事件のせいで我々はものの見事に分断されてしまった。これ以上の事件は防ぎたいのじゃが、誰か妙案はあるかの?」 「でも、これ以上犯行が続くとは限らないわ」冬美さんは疑問を呈する。 「確かにそうじゃ。じゃが、用心し過ぎても損はあるまいて。『石橋を叩いて渡る』じゃよ、冬美さん」 「石橋を叩きすぎて壊さなければいいけれどな」暁がつぶやいた。  しばらく、みんなが頭をひねっていた。僕には良案が思いつかない。 「なあ、手荷物検査をしたらどうだ? ほら、ミステリーでよくあるじゃんか」 「それよ、それ! 草次、たまには良いこと言うじゃない」 「まるで、いつもはぼんくらみたいな言い方だな」草次さんは不満げだ。 「普段、頭が冴えている方じゃないのは確かよ」  二人のやりとりは、緊張していた場を和ますには十分だった。 「確かに妙案じゃ。古典的手法ではあるが、案外役に立つかもしれん。草次殿の言うとおりじゃ。もし、みなが賛成なら実行したいのじゃが、どうかの?」 「おおむね賛成よ。でも、男は男同士、女は女同士でするのが条件よ。それくらい当然よね?」冬美さんが確認する。 「冬美さん、心配には及ばん。わしもそうすべきじゃと思う。異性に見られたくないものもあるからの」 「じゃあ、それで決まりだな。俺って天才だぜ!」 「さすが相棒だぜ」暁は草次さんの背中を叩きながら褒める。 「『善は急げ』じゃ。早速とりかかるかの」
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