発端

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「えーと。『ご当選、おめでとうございます! ラッキーなあなたには離島でのバカンスをプレゼント! 詳細は裏面をご参照ください』……。これ、どういうこと?」 「周平、お前の目は節穴か? つまり抽選に当たったってことだよ。しかも二名まで同伴可能だ! 俺の言いたいことは分かるよな?」 「またまた、ご冗談を」と夏央。 「そんなこと言っていると、連れてってやらないぞ」暁が言い返す。 「仮に締め切りまでに応募したとしても、条件で弾かれなかったのが不思議だよ」  はて、暁の下の名前はなんだっけ? いつも苗字で呼んでいるから思い出せない。 「俺の名前は『暁 春太郎』だ。きちんと『春』の文字が入ってる。それにだ。少しでも当選確率をあげようと、二通応募したんだ」 「二通ぅ? ますますおかしいよ。だって同じ人が二通応募したら、門前払いをくらうよ」僕は首を傾げる。 「誰が自分の名前で二通出したって言った? もう一通は夏央、お前の名前で出したんだ」 「ちょっと、勝手に人の名前を使うなよ!」夏央はカンカンだ。  確かに夏央の名前には『夏』の字が入っている。 「まあまあ、落ち着けって。当日まで時間がないんだ。早めに荷造りしとけよ。集合場所は……」  かくして僕らは離島へのチケットを手に入れた。 53b8cda9-93c3-46fa-acbf-8b1f16a79562
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