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 旅行当日。僕は集合場所が分からず困っていた。船が出る港のレンガ倉庫前に集合と決めたものの、そこかしこにレンガ倉庫が並んでいた。これじゃあ、どれが集合場所か分からない。暁も夏央も同じに違いない。そもそも現地の下調べをろくにしていなかった。まさかレンガ倉庫がこんなにも乱立しているとは想像してなかった。  ひとまず海沿いの倉庫を総当たりだ。幸いにも港は狭い。離島行きの船がどんな色をしているか分からないけど、ぼけっと突っ立っているよりはマシだ。こういう場合、焦るとますますミスをしやすい。深呼吸をする。まだまだ出発まで時間はある。大丈夫だ。そう自分に言い聞かせると、海沿いを歩きだした。  しばらく歩くと汗が服ににじみ出てきた。夏の日差しが首にささる。これは日焼け間違いなしだ。荷物を入れたバッグが鉛のように重い。これでは船に乗る前にダメになってしまう。半月状の港の半分は歩いた。つまり残り半分あるけば、どこかで二人に合流できるはずだ。その時だった。
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