広間での推理

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広間での推理

「さて、『夏の間』ですべきことは終わったかの。荒木殿、部屋の鍵を閉めてくれるかの?」 「もちろんでございます」  荒木さんがガチャリと鍵を閉める。 「みんな気づいておるかもしれんが、『春の間』、『夏の間』と事件現場は季節順になっておる。もちろん、次の事件現場が『秋の間』とは限らんが。なんにせよ、注意するにこしたことはない。これ以上の悲劇は見たくないからの」 「おっしゃるとおりですわ」と薫さん。 「こうなった以上は誰が犯人でもおかしくないな。オレは自室にこもらせてもらう。小僧たちは出歩いているところをやられたしな」秋吉さんがトゲのある言葉を使う。 「釣部社長の言うとおりだ。俺も同じく部屋に戻るぞ」  自室に戻るのだろう。秋吉さんと磯部さんは広間の方に去っていった。 「で、俺たちはどうするよ」暁が聞く。   「暁殿、歩き回るなどとは言うまいな?」 「もちろんさ。俺たちの考えが甘かったんだ……」暁はしょぼくれていた。 「さて、わしは冬美さんや荒木殿と一緒にいるわい。……冬美さん、そうにらむでない。あなたを信じておる。安心するのじゃ。仮にわしが犯人じゃった場合、二人きりでは冬美さんが危ないじゃろうて」 「そうね。じゃあ、決まりね」   喜八郎さん、冬美さん、荒木さんに三日月さんは一緒になって行動するらしい。 「僕たちも五人で固まろう。それが一番だ」 「そうだな。場所は……広間にいるのが無難だな」  僕たちは広間に着くと、椅子に腰かける。 「……」  しばらく沈黙が続いた。それを破ったのは暁だった。
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