広間での推理

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「俺が悪かった。軽率だった。自分が『春の間』で殺されかけていながら、季節の間に行こうと提案した俺に責任がある。もしかしたら、他の三人も死んでいたかもしれない」 「相棒、自分を責めすぎるな。確かに提案したのは相棒だ。でも、それは結果論だ」草次さんが優しく言う。 「そうだが……」 「二人が話している途中に割り込んで悪いんだけど、夏央はなんで冬の間の手前で引き返したんだろう? それに暁がついて行くって提案しても無視したし。一人じゃ危ないことは承知のうえでだよ?」僕は疑問を呈する。 「そこなのよ、腑に落ちないのは。なんで一人行動にこだわったのかしら」と由美子さん。 「そう言えば、天馬は自分の部屋にいたんだよな? 不審な人とか見なかったか?」草次さんが天馬さんに水を向ける。 「うーん、これといってはないかな。僕も部屋にこもっていたから、周りの様子は全然分からないんだ」 「そうだよな。火災報知器の音が聞こえた後は広間に来て、それから周平と偶然会って、俺のあとに『夏の間』に来た。これで間違いないよな?」暁が確認する。 「うん、暁君の言うとおりだよ」 「どこかに新たなヒントがあればいいんだけど……」と僕。 「おい周平。『春の間』と『夏の間』を連続で見たい。連続で見ることで、何か見つかるかもしれない」 「いいよ。ちょっと待ってね……。はい、写真の一覧」  僕はスマホをテーブルに置いてみんなが見えるようにする。 「『春の間』は、『睡眠薬の入った瓶』と『辞書』だね」と天馬さん。 「やっぱり、辞書が目を引くわね。異様よ」 「由美子の言うとおりだ。こいつは俺たちへのメッセージとも挑発とも取れる。二件目の事件現場にもあったし。まるで『捕まえられるなら、捕まえてみろ』って感じだな」草次さんは苛立たしげだ。 「辞書が一つ目の共通点だね。それと第二の事件。こっちは『燃えた木の棒』、『ライター』、『紙切れ』、『コート』、『タロットカード』、『辞書』。こっちでも犯人は凶器を捨てて逃げている。これが二つ目の共通点。ほんと、質の悪い犯人だね」と僕。 「犯人は凶器からは足がつかないと高を括るってやがる。すぐにふんじばってやる!」  暁が手を握る。拳がわなわなと震えている。夏央を殺されて僕と同じく激昂しているに違いない。  この場では言えないが、由美子さんのタロット占いが気になる。「死」「塔」といずれも事件を暗示しているように思えてならない。特に「塔」については「塔で火災が起きる」という現実と一緒だ。仮に由美子さんが犯人なら、タロット占いを使って恐怖心を煽れるかもしれない。しかし、それなら、草次さんも共犯になる。第二の事件で火災報知器が鳴ったときは、由美子さんと一緒だったと証言している。  でも、由美子さんは違う気がした。あくまでも直感だけど。なぜならタロット占いでみんなが悪いカードを引くたびにポジティブに解釈していたからだ。    では、タロット占いの場にいた別の人物、すなわち犯人が利用したとしたら? あの場にいたのは僕に暁、夏央に天馬さん。草次さんに由美子さんだ。もし、その中に犯人が混ざっているとしたら?
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