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しばらくすると、夕食の時間になった。やはり、広間に来ない人もいる。秋吉さんと磯部さんだ。夕食はとても気まずい空気が漂っていた。
夕食を食べ終わったときだった。薫さんが窓辺へ向かう。窓を開けるとタバコを吸いだした。意外だった。
「待てよ、そうだ、タバコ! 喫煙者ならライターを持っていてもおかしくない! どうだ?」暁があたりを見渡す。
「でも、私はマッチ派よ」薫さんが手に持ったマッチ棒を見せる。
「お母さんはいつもマッチなんだ。ライターは使わないよ」天馬さんがフォローする。
「だが、一つの可能性としてはありだろ? 他に喫煙者はいないのか?」暁がみんなの反応を待つ。
「暁殿、喫煙者を犯人と断定するのは早計じゃ。計画的な犯人のことじゃ。喫煙者じゃなくても、事前にライターを持ってきておっても不思議ではなかろう」
暁はがっくりしたようだった。無理もない。友人の仇を絞り込めそうだったのだ。
「今夜は自室から出てはならん。また明朝会おうぞ」
喜八郎さんの言葉を合図に、みんなぞろぞろと広間を去っていった。
僕はすぐには寝つけなかった。今日は色々なことが起こりすぎて疲労が酷かったが、それよりもショックの方が上回った。「春の間」での暁の殺人未遂に、「夏の間」での夏央の焼死。なぜ、僕の友人ばかりが被害者になるのか。
もちろん、犯人が意図的に僕の友人ばかりを狙っているわけではないだろう。おそらく、何らかの理由か意図があるに違いない。もし、犯人が分かれば警察に引き渡して、その罪に相応しい罰を受けさせてやる。
ふと、ナイトテーブルに置いた『初心者のタロット占い』を手にとる。暁の未来は「死」のカード、夏央の未来は「塔」のカード、そして僕の未来は「悪魔」。はたして、僕の未来は当たるのだろうか。何かによって絶望するのだろうか。それとも、僕自身が「悪魔」のカードになぞらえられて殺されるのだろうか。そのどっちもごめんだ――
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