共通点

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「さて、まずはどこから探すかの?」 「書庫なんかどうでしょうか。あそこは広いですし、隠れるのにも、隠すのにもうってつけです。荒木さんが被害者にせよ、犯人にせよ一番可能性が高いと思います」僕は提案する。 「ふむ、諫早殿の意見に賛成じゃ。諫早殿の言っていた書庫の惨状も見ておきたいからの」  僕たちは書庫に着くと、さっそく荒木さんを探す。小さな図書館と同じ大きさの書庫だ。探すのには骨が折れた。 「収穫はなしじゃの。じゃが、ここに来て気づいたことがある。諫早殿も気づいているかもしれんが、やけにことわざ辞典が多いの」 「ええ、そうなんです。いくら読書家でも、ことわざ辞典ばかりあるのが不思議なんです。普通、一、二冊あれば十分だと思います」   「ポイントはそこじゃよ。『春の間』に落ちていたのも、『夏の間』に落ちていたのも、普通の辞書ではなく『ことわざ辞典』じゃったからのう」 「え、そうなんですか!? 全然気づかなかった……」  僕には観察力が足りないらしい。 「まあ、無理もあるまい。わし自身もこの辞書の山を見て気づいたんじゃ。荒木殿は見つからなかったが、収穫はゼロではなかったようじゃ」  喜八郎さんは満足げだった。 「さて、三日月さん、他にどこがあるかの?」 「残りは救護室、キッチン、ワインセラーです。ワインセラーはキッチンの奥にあります」 「じゃあ、次は救護室に向うとするかの」  救護室は空振りに終わった。 「最後にキッチンとワインセラーじゃな。あとのグループが荒木殿を見つけておれば、良いのじゃが……」  救護室から広間をのぞいても、どちらのグループもいない。まだ荒木さんは見つかっていないらしい。  
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