秋の間

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秋の間

 広間に着くと、先に薫さんたちのグループが戻っていた。「冬の間」を探していたはずだ。 「それで、そっちは荒木さんを見つけたか?」草次さんが問いかける。 「それが、荒木さんは――」  僕は言葉を続けることができなかった。 「うわあああぁぁあ」  再び悲鳴が館の中を響き渡った。 「なあ、今のって天馬の悲鳴じゃないか? 『春の間』の事件のときに聞いたのと似ているぞ! 悲鳴はどこから聞こえる?」草次さんが怒鳴る。 「草次さん、『秋の間』の方だと思う!」  春の間、夏の間は封鎖されている。他の部屋は僕たちが見てまわっている。そして、天馬さんは暁、秋吉さんと「秋の間」へ荒木さんを探しに行っていた。「秋の間」と考えるのが妥当だ。 「急ぐのじゃ! みな先に行っておくれ。わしを置いて行くのじゃ。後ほど合流じゃ」 「でも、それだと犯人に襲われるかもしれません」  確かに喜八郎さんは足が不自由だ。そうは言っても、僕たち全員が先に行っては、今度は喜八郎さんの身に何があってもおかしくない。 「天馬殿がなぜ悲鳴をあげたのか不明じゃが、新たに事件が起きたと考えるべきじゃ。『春の間』の事件では、由美子嬢のおかげで暁殿は死なずに済んだ。今回も間に合うかもしれん。さあ、行くのじゃ!」 「爺さんの言うとおりだ。おい、由美子も急げ」 「うん、分かったわ。間に合えばいいのだけれど」由美子さんは不安げだ。 「分かりました。先に行ってきます!」 「三人とも、気をつけるのじゃぞ」  
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