秋の間

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僕は「秋の間」に向かって走り出す。当然、草次さんの方が足が速い。 「周平、無理して急ぐな。この緊迫した状況で無茶すると、フィジカル的にも参っちまう。ここは俺に任せろ!」  そう言うが早いか、草次さんはビュッと風のように僕の横を駆け抜ける。こういう場面では草次さんが頼りになる。暁も速いが、今は「秋の間」にいるはずだ。「春の間」に続き、暁が被害者の可能性もある。夏央に続いて暁まで失うわけにはいかない。そのとき、タロット占いの未来が頭をよぎる。僕の未来は「悪魔」のカード。希望がないらしい。そのような未来はごめんだ。  「秋の間」までの道のりは永遠のように感じた。走っても、走っても、前に進んでいる気がしない。恐らく自分の中の本能が危険を知らせているのだろう。もどかしい。  なんとか「秋の間」に着くと、天馬さんが口をパクパクさせて、何かを指している。声を出したくても出せないようだ。天馬さんをそれほどまでにするのは、よほどショッキングな状況に違いない。 「おいおい。マジかよ……」  先に着いた草次さんが呆然と立ち尽くしている。  目の前に広がっていたのは――首にロープがかけられ、吊り下げられた秋吉さんだった。  僕は眼前の光景に絶句した。秋吉さんは梁からロープで吊られてぐったりしており、気を失っているだけなのか、遠くからはでは判断が出来ない。僕の足は棒のようで、うまく動かない。その場に足が根をはってしまったような感覚だ。
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