証言

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「待って、素人が冷静に判断できるわけないじゃない。二人を責めるのはお門違いよ。あなたの言っていることは結果論よ。それに、あなたの言葉で傷ついた二人が責任感のあまり自殺でもしたら、あなたも殺人者になるのよ。言葉は選ぶべきよ」冬美さんが言い返す。  僕は少しだけ救われた気がした。 「さて、二人が釣部殿をおろしたところじゃったな。それからどうしたのじゃ?」  僕たちは脈を測って手遅れだと気づいたこと、由美子さんがやって来たことを簡潔に説明した。 「なるほど、よく分かった。さて次は暁殿じゃ。貴殿らは三人で行動しておったはずじゃが」 「そうだな、次は俺の番だ」暁は静かに言った。 「うむ、では話を聞こうかの」 「信じてもらえるかは自信がないぜ。ただ、本当の話だ。天馬の親父と天馬と一緒に『秋の間』周辺で執事を探していたんだ。すると親父の方が『天馬と二人で話がしたい』って言い出したんだ。今はそれどころじゃないって反論しても、聞き入れてもらえなかった……。あれは異常だった。一種の執念のようなものを感じた」暁は一息つく。 「しかたがなく、二人を『秋の間』に残して、近くで執事を探していたんだ。そしたら……その後の説明は不要だろ。相棒が言ったように俺が部屋に入ったら、すでに親父さんが床におろされていたんだ」  暁の話を聞いてなるほどと思った。あんなに天馬さんのことを嫌っていたのに、おかしいと思っていたのだ。「秋の間」を探すときに秋吉さんが天馬さんをメンバーに選んだのは理由があったのだ。その理由についてはもう聞くことはできないが。 「おい、この小僧は信用ならんぞ。そんな都合のいい話があるわけない。この小僧が犯人に違いない。早く縛り上げてどこかに監禁すべきだ!」磯部さんが喚き散らす。 「おいおい、ちょっと待て。相棒の話だけじゃなくて、当事者の天馬の話も聞くべきだ。そうだよな?」草次さんが喜八郎さんに助けを求めて目をやる。 「そうじゃな。それから考えても遅くはなかろう。天馬殿、落ち着いたかの?」 「ええ、今なら大丈夫です」
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