秋の間での推理

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「喜八郎さん、待ってください。これを見てください!」  僕は興奮しすぎて、小躍りした。僕の指す先には、開かれたことわざ辞典が置いてあった。それもだった。二冊? 今までは一冊だった。この違いは何を意味しているのだろうか。 「おお、諫早殿お手柄じゃ。わし自身が『見るではなく、観るじゃ。観察じゃよ』と言っておきながら、なんという失態じゃ。これでは人に助言できるような立場ではなくなってしもうたわい」喜八郎さんがため息をつく。 「さて、今回も『ことわざ辞典』じゃの」 「今回も? どういうことですか?」  そうだった。他のグループには書庫での発見を共有していない。僕たちは由美子さんたちに書庫での発見を説明した。 「なるほど、今までの現場に置いてあった辞典には共通点があったのね。一歩前進ね」冬美さんが明るく言う。  「ことわざ辞典」という共通点、これにより僕たちは前進した。一方で、荒木さんの現場にはことわざ辞典がなかったという事実が際立った。この違いには犯人の何かしらの意図やメッセージがあるのだろう。それが解ければ、犯人像が絞り込めるに違いない。
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