秘密

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「おい周平、心ここにあらずだぞ。俺の話聞いてたか?」  どうやら僕が考え込んでいる間に暁に話しかけられたらしい。 「ううん、ごめん。考え事してた」 「お前、あの爺さんと広間で話してから少しおかしいぞ? 本当に大丈夫か?」暁が念を押す。  危うく暁に真実を悟られるところだった。いくら喜八郎さんとの約束とはいえ、友人に知らせることが出来ないのは胸が痛む。嘘がつくのが苦手な僕は正直、早く真実を伝えて楽になりたい。でも、そうはいかないのだ。 「で、何の話だったっけ?」 「今日、明日とどうするかって話。もちろん日中は周平のそばにいて、警護するぜ。でも、夜はそうもいかないからな。相棒どう思う?」 「そうだな、それは考えてなかった。夜中をどうするかだな。誰か妙案はないか?」と草次さん。 「それは心配しすぎだよ。ほら、この鍵の束を見てよ。季節の間の鍵はもちろん、すべての部屋の鍵があるんだ。マスターキーがない以上、僕が部屋の鍵を開けない限り犯人は僕を襲えない。もちろん、スマホから証拠写真を消すこともできない。どう?」 「確かにそれなら安心だな。鍵の束を犯人が持ってっていたらと思うとぞくってするぜ。まあ、誰かさんが犯人じゃあない前提だが」暁が茶化す。 「おお、もしそうだったら俺たち全員あの世行きだぜ」草次さんが続く。 「もう二人とも場を明るくしたいのは分かるけれど、冗談もほどほどにね。天馬さんなんか間に受けて震えているじゃない」  そんな風にふざけあっているうちに夜の帳が下りた。
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