最後の晩餐

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 希望で思い出した。草次さんのタロット占いの結果は「星」すなわち希望だった。対する僕の未来は「悪魔」つまり絶望だ。でもこれ以上の絶望はありえない。そのときだった。 「ねえ、これ何かしら?」薫さんがテーブルの下からの何かのカードを拾い上げた。 「『夏歌う者は冬泣く』? 誰か落とし物よ」  薫さんの言葉を聞いた瞬間、その場に緊張が走る。 「あのぅ、それって犯人の犯行声明じゃありませんか? 季節の間にもそれぞれの間に合ったことわざ辞典が置いてありましたよね。春、夏、秋と季節順に犯行が行われています」天馬さんがおずおずと言う。 「でも、天馬さん、ここは『広間』よ。『冬の間』じゃないわ。だってあの部屋は封鎖済みよ?」  僕は喜八郎さんの方を見る。彼は首を振っていた。言うなの合図だ。 「だからといって安心もできないだろ。犯人が季節の間への固執を捨てれば、どこでだって事件は起こりうる」  草次さんの言葉は僕たち二人の発見に迫りつつある。この場で新たな共通点がばれれば、間違いなくパニックに陥る。 「なあ、さっきから気になってたんだが周平の様子がおかしくないか? さては何か隠し事をしているな?」草次さんが詰め寄る。  やはり僕は嘘がつけないらしい。顔に現れてしまったようだ。 「そこまでじゃよ。諫早殿を責めるのは筋違いじゃ。わしが悪いのじゃ。わしから秘密にするように頼んだのじゃから。さて、これ以上隠すとみながわしらを疑い、またしても結束が崩れてしまう。じゃから、わしから話そう」みんなが喜八郎さんの方を見る。その顔は恐怖で顔面蒼白だった。
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