発端

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発端

「ジリリリリーン」  館中にけたたましく音が鳴り響く。僕は暁と顔を見合わせる。 「これ、何の音?」 「火災報知器じゃないか? 火事に違いない! 早く消火に行くぞ!」暁はそう言うが早いか、音のする方へ走りだす。「夏の間」の方だ。 「暁の方が足速いから先に行って!」  暁は手を挙げて了解の合図をすると、視界から消えた。 「諫早さん、大変なことになってそうだ!」  天馬さんが駆け寄りながら叫ぶ。  息を切らして天馬さんと火災現場にたどり着くと既に鎮火していた。恐らくスプリンクラーが作動したのだろう。初期消火は終わっていた。一安心だ。  だが、部屋の中から異様な臭いがする。恐る恐る部屋を覗くと椅子に誰かが縛りつけられている。そして、その人物は――焼死していた。 「そんな……」先に着いていた暁がポツリとつぶやく。  それからまもなくだった。喜八郎さんが杖をついて、ゼエゼエ言いながらやって来た。片足が不自由なので、ここまで来るのに苦労したに違いない。 「ついに、殺人事件が起きてしまったようじゃな……」  僕らは前の事件のせいで、お互いに疑心感を持っていた。そんな中での殺人事件だ。これは、僕たちの信頼を崩しさるのに充分だった。 「暁さん、君がやったの……?」天馬さんが、思わず尋ねる。 「そんなわけあるか! だって、殺されたのは……」暁は絶望のためか、その後の言葉が続かない。  こうして、豪華バカンスは殺伐とした、血生臭いへ殺人現場へと変貌していった。
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