想いのカタチは違くても

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その日の晩、私はおばあさんに頂いたカボチャのパイを夕食代わりに食べた。 「……美味い……。」 甘すぎない、程よい甘さ。 潰されたカボチャは綺麗に裏ごししてあって、舌触りも滑らか。 生地はしっかりしていて、お腹に程よく溜まる。 普段よく食べるパイと比べても、手間暇がかかっているのが分かる。 そして、その手間暇全てが、おばあさんから娘さんへの想いが詰まっているように思えた。 小さな子でも美味しく食べられるように、餡を滑らかにする。 栄養が偏らないように、甘さは子供が喜びそうなギリギリの甘さに留める。 ひとつでもお腹いっぱいになるように、生地はしっかりと作る……。 「この家にとって、これは『おふくろの味』なんだなぁ……。」 ふと私は思い立ち、冷蔵庫を開ける。 そこには、先日実家の母から送られてきた、手作りの蒸しパンが入っていた。 『ちゃんと食べなさい。小説家と言えども身体が資本であることに変わりはないですよ。』 そんなメモと共に送られてきた蒸しパンは、私が子供の頃大好きで幾つも食べたものだった。 「子供の好きなもの、好きな味付け……覚えてるものなんだな。」 カボチャのパイを食べながら、何故か急に実家が恋しくなってしまった。
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