想いのカタチは違くても

13/15

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
考えがあります、そう自信ありげに言った私。 しかし、小説家が考える秘策など、『文』くらいのもの。 それでも、その文で身を立ててきたという自負はある。 「手紙を書きましょう。おばあさんの想いを、隠すことなくストレートに。面と向かったら照れや意地で話せないことも、文字に乗せれば綺麗に伝わるものです。」 しかし、おばあさんは苦笑いを浮かべた。 「でも私……先生のように素敵な文なんて書けないし、きっと見苦しくなっちゃんじゃないかしら?」 「心を文字に乗せれば、それでいいんです。きっと私たち小説家よりも、心のこもった良い手紙が書けるはずです。見た目のカタチじゃなくていいんです。想いのカタチが大切なんです。」 「分かりました。書きます。」 おばあさんはそう言うと、真剣に手紙を書き始めた。 書き終わるまで、3時間。 私は最後まで、おばあさんが書き終わるまでを見届けた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加