想いのカタチは違くても

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「では、私はこれで……。」 娘さんが私の目の前で手紙を開き始めたので、ただ眺めているのも野暮だと思い、私はその場を立ち去ることにした。 カボチャのパイはもったいないので、おばあさんに事情を話してまた頂こうかと思った。 しかし……。 「ちょっと、待ってくれない?」 私を呼び止める、娘さんの声。 私が振り返ると、娘さんの目は真っ赤になっていた。 今すぐにでも泣き出しそうな勢いだ。 私は、おばあさんの手紙が、娘さんに響いたのだと確信した。 「あなたの入れ知恵? お母さん、文を書くなんてしない人だから。」 私は小さく頷く。 「えぇ。でも手紙の内容は知りません。私が一言だけしたアドバイスは、『飾らなくていいから思ったことを、心のままに』ですから。その手紙に書かれている文字が、お母さまが届けたいと思っている素直な気持ちで、本心ですから。」 娘さんは手紙を大切そうに胸に抱くと、私に向かい手を伸ばした。 「カボチャのパイ……やっぱり頂いてもいいかしら?」
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