想いのカタチは違くても

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「先生、今日はどこまで出かけるんだい?」 村人は皆、私に優しかった。 皆が私のことを『先生』と呼ぶのは、私が引っ越してきたその当日の歓迎会の日に、私が小説家であるということを話したからであった。 引っ越した当日に村の人が皆、自分の家で作った料理と、家にある酒を持って来た。 「久しぶりに村に来てくれた新しい仲間だ。歓迎会するべ。」 出来るだけ静かな環境で執筆したかった私。 しかし、村人たちの厚意を無下にするわけにもいかず、私は皆を招き入れた。 気が付くと、私も目が回るほど酒を飲み、腹がはち切れんばかりの量を食べていた。 どの酒も料理も、今まで食べたことがないくらい美味かったのだ。 煮物、焼き魚、きんぴら……。 決して高級ではない、家庭料理。 しかしそのどれにも、愛情がしっかり詰まっていた。 そんな料理を食べるのは、久しぶりだった。 そして何より、村人たちの温かさ、優しさに私は心打たれた。 無機質な都会での生活に慣れきっていた私は、この村に居心地の良さを感じたのだった。
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