想いのカタチは違くても

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少しずつ、確実に村人たちとの距離を縮めていくことが出来た私。 そんなある日のことだった。 私は、おばあさんを村役場から自宅に送り届けた。 「いつもすまないねぇ。」 「いいえ、このくらいお安い御用ですよ。いつでも声をかけてくださいね。」 このおばあさんと知り合ったのは、私がこの村に引っ越してきて間もない頃。 家の掃除を手伝ってくれたり、おかずの差し入れなどを良くしてくれた。 恩返しの意味も込め、私はおばあさんの週1回の病院への送迎を買って出ている。 「お待たせしました。着きましたよ。」 「ありがとうねぇ。これはほんのお礼だよ。」 おばあさんが差し出したのは、大きな栗の実。 こんな大きな栗は、見たことが無かった。 「立派な栗ですね。」 「大きな栗で栗ご飯、最高だよ。煮物にしてもいいし、栗きんとんにしてもいい。甘みが強いから、砂糖も少しでいいんだよ。」 満面の笑みで、おばあさんは私に栗の一杯入った袋を手渡した。
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