想いのカタチは違くても

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狭い村から隣町まではそう遠くない。 そして隣町も、それほど大きな町ではなく、おばあさんの言っていた娘さんの家はすぐに見つかった。 「ここか……。」 まだ甘い匂いのする紙袋を手に、私は娘さんの家の前に立った。 インターホンを鳴らすと、出てきたのは40代半ばの女性。 10歳くらいのお嬢さんと一緒だった。 「……どちら様?」 訝しげな表情を見せる娘さん。 無理もない。私と娘さんは初対面。 知らない男が紙袋を持って自宅の玄関の前に立っているのだから、私のことを不審者だと思っても仕方がないことだ。 「あ、私……村の者です。実は、あなたのお母さまから預かっているものが……。」 出来るだけ穏やかに話しながら、私は紙袋を娘さんに差し出した。 しかし、その紙袋を見て中身が分かったのか、 「それ、いらないわ。返しておいてくれる?」 娘さんは素っ気なく、私に言った。
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