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「いや石になってるけど」
「じじいも地蔵になれば、少しは改心するじゃろう。つくづく悪運の強いやつじゃ」
それから、あたし達は石のタヌキとか人を村まで運んだ。クレストはかるがると人を抱えてた。
「クレストってほんと、力が強いのね」
いいなあ。あたしもいつかお姫様抱っこされたい。荷物みたいに運ばれそうだけど。
村に着くと、石になった人を並べて再び見えないように魔法をかけた。
「やっぱり村はずっと消えたままなのか」
クレストはちょっと残念そうだった。
「みんなが無事に戻ったら、村も現れるわよ」
「そうだな」
一仕事終わったので、あたしとクレストはコールの家にお邪魔した。
「コールはじいさんなのか? 若いな。お嬢様より若いぞ」
なんだかクレストに言われると複雑。
「ねぇ、コールはこの村に一人だったんでしょ? 食事とかどうしてたの?」
「まあ、野菜を作ったりもしておったが、この村から森の出口までに目眩ましの道を作って、グラフに出稼ぎに行っていたんじゃ」
「ええっ!」
「グラフは面白い街じゃよ」
「俺達、グラフを目指してたんだ」
「良かったら案内するぞ」
「ほんと?」
「わしの行きつけの店を紹介しよう」
「何の店だ? うまいものあるのか?」
「うまいものもあるし、いろんな店もあるぞ」
「やった! お嬢様、楽しみだな」
クレストは嬉しそうに笑った。あたしも魔法都市グラフに行くのが、内心すごく楽しみだった。もう少しクレストと仲良くなりたいけど、クレストがもとに戻れたんだからそれだけで満足。あたしは二人を見ながらそんな事を思った。
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