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バルドおじさまはあたし達を正視するのが耐えられなかったのか、妖鳥の死骸の方を見てしまうと、そのままその場に倒れ込んだ。
「うっ……」
「おじさま⁉︎」
「バルド、大丈夫か?」
「私は……血が駄目なのだ」
そう言って気絶してしまった。
***
おじさまはしばらく、客室のベッドで寝込んでいた。気絶させちゃって、ちょっと申し訳ないような気がする。
あたしはもともと、バルド様がそんなに嫌いじゃない。お父様と違っていつも優しくしてくれたし。でも、だからこそ結婚話が出た時のショックが大きかった。うまく言えないけど。
庭では魔方陣技師が、妖鳥の死骸を調べてる。この妖鳥は珍しいから、研究所へ送られるらしい。
クレストはあたしの告白にも何も言ってくれない。まあいいか、断られなかったんだし、しつこく言ってたらそのうち伝わるかも。
あたしはバルド様の寝込んでいる客室をのぞいた。バルド様はすでに起きていたけど、心配そうなリリーとお父様が付き添っていた。
「おじさま……ごめんなさい」
「ファー、イーグルとも話したのだが、さっきの言葉は聞かなかった事にするよ」
「えっ?」
「君はまだ若い。いろいろ旅をして、結婚はそれから、という気持ちも理解できる」
あたしは困惑した。バルド様が何を言いたいのか、よくわからない。
「君が首都に行きたいのなら行ってきなさい。母親にも会いたいだろう。旅は危険だから護衛の兵士でもいたほうがいいだろうな」
「おじさま……」
「ただ、私の気持ちは変わらない。私の四番目の妻の座は君のためにあけておこう。これから先、私が結婚する事があっても、それは五番目の妻ということだ」
そんな妻の座、いらないんですけど。
「ううっ。すまんなバルド」
何を二人で感動しているんだか。
「はぁ、ではお父様、バルド様、行ってまいります」
なんだか拍子抜け。だけど結婚は、しなくてもいいのよね? 少なくとも、首都への旅が終わるまでは。
おじさまには悪いけど、あたしは喜びを隠しきれなかった。早く旅の準備しなくちゃ。
客室を出ると、リリーがついてきた。
「お嬢様! 私の、お嬢様にくっついて行ってバルド様を毎日近くで眺めるという計画はどうしてくれるんです!」
「何よそれ」
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