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「今からでも遅くありません。あんな傭兵とは別れて、首都にはバルド様と新婚旅行で行けばいいじゃありませんか」
「嫌よ。もう決めたんだから」
あたしは自分の部屋に戻って着替えた。旅には何を持っていけばいいのかな。よくわからない。とりあえず着替えはいるわよね。それから髪飾りとバッグと靴と……。すごい荷物になりそう。何を持って行くべきかクレストに聞こう。
一階にいたはずなのにクレストはいなくなってた。もう、どこに行ったのよ!
お父様が意地悪く笑った。
「あの傭兵なら、さっき出ていったぞ。お前とつりあわないと知って身をひいたのだろう。残念だったな。旅は他の護衛と行くんだな」
「お父様なんて大嫌いよ! 本当に出ていくわ! さよなら」
「待ちなさい、ファー」
「何よ」
お父様はあたしに靴の入った箱を手渡した。
「これは魔法のかかった靴だ。長距離を歩いても足が痛くならない」
「お父様」
「私の大事なコレクションなのだから、かならず返すように。まめに連絡をし、首都までは最短で行くのだぞ。まったく‥…すぐに出ていかなくてもいいだろうに、つくづくお前はレティーナそっくりだ」
肩を落としたお父様はさみしそうだった。
「お父様、行ってきます。首都に着いたら手紙を書くわね」
あたしはお父様の腕にぎゅっとしがみついた。
屋敷を出て、あたしはクレストを探した。結局バッグ一つしか持って出られなかった。あと、おこづかいが少し。
クレストは屋敷の門の外に座っていた。あたしを見てちょっと驚いてる。
「クレスト、待っててくれたの?」
「お嬢様に、お別れを言うのを忘れてたからさ……」
「何言ってるの。あたしも旅に出るの。護衛をしてくれるんじゃないの?」
「旅は危険だけどいいのか? お屋敷にいる方が安全だし快適だ」
「いいの。お屋敷にいたらおじさまと結婚させられそうだもの。それに魔石もないし妖鳥もいないから大丈夫よ。クレスト、あたしの旅についてきてよ。こんな可愛いお嬢様のお願いを断るなんて損するわよ」
クレストは笑った。うう、やっぱりかっこいい。
「やっぱりお嬢様だな。逆らえない気分になるよ」
なんだか無理やりお願いしたみたいだけどいいわ。クレストと一緒に旅ができるなんて最高。あたしは幸せな気分でクレストの隣りを歩きはじめた。
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