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「小さい村だな」
あたしとクレストは小さな村の入り口に立っていた。その村は背の高い生け垣で囲まれていて、入ってすぐに乗り合い馬車のとまっている広場がある。その奥に、少し大きな建物と看板が設置されてる。
あたしとクレストはリズの街を出て、あたしの希望で乗り合い馬車に乗ってこの村に到着した。
看板を読むと『道の駅ロストヴィレッジ』と書いてある。その下には『転移魔方陣設置しました! 魔法都市グラフへ行くならぜひ魔法で!』と記入されてる。
あたしとクレストは首都への途中にある魔法都市グラフを目指していた。
「なあ、ここ村じゃないのか?」
クレストは馬車のおじさんに聞いていた。
「ここは『道の駅ロストヴィレッジ』だよ」
「グラフに行くにはどうしたらいいんだ?」
「馬車を乗り換えて、海沿いをずっと行けばグラフだ」
「いくらなの?」
「三千ルビンだ。一人につき千五百」
とおじさんは答えた。
「高いじゃない。リズからここまで、一人三百ルビンだったわよ!」
あたしが文句を言うと、おじさんは肩をすくめた。
「安全なルートは海岸沿いしかない。距離が遠いからしかたないだろう? 転移魔方陣よりは安いぞ」
「クレスト、どうする?」
「とりあえず、このなんとか駅を見てまわって、なんか食おう」
「そうね」
広場の奥にある建物は、一番新しくてきれいだった。外観も都会的で、田舎の村では見かけない豪華な装飾がある。
扉をあけると、中には赤いじゅうたんが敷いてあった。それから木造のカウンターと椅子。木造だけどどっちも磨き上げられててきれい。中には笑顔のおじさんと、カウンターにはお姉さん。椅子には何人か旅人が座っていて、あたし達が入っていくと、みんなが一斉にこっちを向いた。
「ようこそお嬢さん。グラフまで旅行かな?」
笑顔のおじさんが話しかけてきた。
「そうだけど」
「なら、ぜひ! うちの転移魔方陣をご利用ください! 今なら護衛の方の料金含め、二万ルビンで引き受けるよ」
高っ。
「もう少し考えるわ。馬車で行ってもいいし」
「お嬢さん、時間は有限だよ! 転移魔方陣は高いが、狭苦しい馬車にゆられて長時間移動しなくてもいいんだ。あの遠いグラフまで一瞬! 一瞬で行けるんだ。目を開けばそこはグラフ!」
おじさんのテンションも高いわね。
「でも二万は高いわ。そんなに持ってないの」
「そうかね? お嬢さん、いいとこの生まれだろう?」
えっ、なんでばれたの?
「なら一万でどうだい? 君が一人で先にグラフに行って、護衛はあとから馬車でもなんでも使えばいい」
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