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「お嬢様、つきとばしてごめんな。大丈夫か?」
「あたしは平気だけど……クレスト、大丈夫なの?」
「やられた」
クレストはその場にしゃがみこんだ。
「どうしたの? どこか悪いの?」
「体が重い。石みたいだ」
「え?」
クレストはそのまま足を投げ出して地面に寝転がった。
「まいったな。お嬢様、おれはグラフに行けそうにないよ。悪いけど一人で向かってくれ」
「クレスト! どうしたの? 何かの毒なの⁉︎」
「多分、石化の魔法だな。見てくれ、俺の足」
あたしはクレストの足を見た。アースカラーの茶色いブーツは白っぽい灰色に変化してる。触ろうとしてクレストにとめられた。
「触らない方がいい。うつったらまずいだろ?」
「クレスト、あたしどうしたらいいの……」
「さっきの蛇が、この森の主だ。多分もう森に魔物はいない。このままグラフに行ってくれ」
「クレストはどうなるの? 死んじゃうの……?」
「俺はこのまま石になって過ごすよ。運がよければ、いつか誰かが石化をといてくれるかもな。その時まで壊れてなければ。ああ、ダメだ。重い……」
「クレスト! 嫌よ! 一人で行くのは。あたし、石化を解く方法探すわ! だって……あたしのせいだもの……。クレスト……好きなんだから」
クレストにあたしの声が聞こえているのかどうか分からなかった。クレストの全身は灰色みたいな白っぽい色に変わってた。
クレストが……石になっちゃった。
「ううっ……ごめんね、クレスト」
あたしはしばらくめそめそした後、立ち上がった。クレストが壊れないように慎重に土や材木や落ち葉で周囲を補強する。これでよし。大地震とか、木が倒れたりとかしないかぎり大丈夫のはず。
とりあえずグラフに行こう。泣いてる場合じゃないわ。魔法都市だから、石化をとく魔法がきっとあるはず。高かったらお父様にお金を送ってもらえばいいわ。
あたしは石になったクレストを一度振り返ってから、森を歩き始めた。
ううっ、クレスト……すぐに戻ってくるからね。
少しも進まないうちに、頭が重い事に気付いた。よく見ると、束ねてた髪の毛の先が灰色になって、それがじわじわと広がってる。あたしも石化してるんだ! クレストを治す前にあたしが石になったら大変!
あたしは蛇の死体を避けてクレストの剣を探した。だめだわ、これも石になってる。
最初の場所まで戻った。クレストが狼に投げた短剣があるはず。
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