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怖い事実に気付きそうで考えたくない。お墓は木で作られてて、いろんな名前が彫られてる。そして、お墓がつくられたのがだいたい二十年前くらい。
あの蛇みたいな魔物に、みんな襲われたんだ。きっと
でも、ちょっと待って? みんな襲われたんなら、誰が白い幕を作ったりお墓を作ったりしたんだろう。きっと生き残った人がいるはずよ。村から出てなければ。
お墓をあとにして、あたしは再びパム村の探索に戻った。
小さな村。あの道の駅とたいして変わらないくらい。
お店が一軒あって、雑貨や武器や食品が全部売られてた。食品は保存食ばかりで古い感じだけど、ここはそんなにほこりは積もってなかった。誰かが利用してるのかも。
「ミャー」
「わあっ!」
ものすごくびっくりした。足もとに猫がいた。きれいな灰色の猫。瞳は昔絵本でみた深い海の色で、あたしをじっと見てる。
「どこから来たの?」
あたしが猫に話しかけると、猫は店を出た。
猫のあとをついていくと、一軒の建物に入っていった。ここは、まだ入ってない家みたい。
この家は、いままでの家と違ってた。掃除されてる。なんだか落ち着く感じ。こじんまりしたキッチンには野菜と、クッキーみたいなお菓子。
隣の部屋にはたくさんの本や、ビンに入った液体に植物。何かの研究中みたい。さらに隣の部屋にはベッドと、机とクローゼット。
ベッドはきっちり整っていて、畳まれたローブが上に置いてあった。クレストが好きそうな、地味な色。あたしもっと明るい色がいいと思うんだけど。
机の上にはえんじ色の分厚い本があった。何気なくページをめくる。きれいな文字がずっとつづられてる。日記みたい。読んでいいのかな?
あたしはちょっと悩んだけど、今は非常時という事で、最近のページをめくってみた。
『○月×日
うまくいった動物たちは、ポチ以外みんな逃げてしまった。
わしも、逃げるべきだろうか。だが、あの化け物を倒す魔法を完成させるまでは、この村から離れるわけにはいかん。
石になった仲間のためにも』
やっぱりこの村、あの蛇に襲われたんだ。
日記は毎日書いてあるわけじゃなかった。数ヶ月とんでたり、何か重要な事があった時だけ書いてあるみたい。ぱらぱらめくってると、
『大変な事が起きた』
という一文が目についた。
『○月×日
大変な事が起きた。
石になった手と頭は戻ったが。
もう一度一から作り直さねば。
しかしわしは美形じゃ。あらためて実感』
何これ。
結局大変な事って何?
てっきり、蛇に関する何かだと思ったのに。
「ミャー」
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