失われた村

11/15

6人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
 怖い事実に気付きそうで考えたくない。お墓は木で作られてて、いろんな名前が彫られてる。そして、お墓がつくられたのがだいたい二十年前くらい。  あの蛇みたいな魔物に、みんな襲われたんだ。きっと  でも、ちょっと待って? みんな襲われたんなら、誰が白い幕を作ったりお墓を作ったりしたんだろう。きっと生き残った人がいるはずよ。村から出てなければ。  お墓をあとにして、あたしは再びパム村の探索に戻った。  小さな村。あの道の駅とたいして変わらないくらい。  お店が一軒あって、雑貨や武器や食品が全部売られてた。食品は保存食ばかりで古い感じだけど、ここはそんなにほこりは積もってなかった。誰かが利用してるのかも。 「ミャー」 「わあっ!」  ものすごくびっくりした。足もとに猫がいた。きれいな灰色の猫。瞳は昔絵本でみた深い海の色で、あたしをじっと見てる。 「どこから来たの?」  あたしが猫に話しかけると、猫は店を出た。  猫のあとをついていくと、一軒の建物に入っていった。ここは、まだ入ってない家みたい。  この家は、いままでの家と違ってた。掃除されてる。なんだか落ち着く感じ。こじんまりしたキッチンには野菜と、クッキーみたいなお菓子。  隣の部屋にはたくさんの本や、ビンに入った液体に植物。何かの研究中みたい。さらに隣の部屋にはベッドと、机とクローゼット。  ベッドはきっちり整っていて、畳まれたローブが上に置いてあった。クレストが好きそうな、地味な色。あたしもっと明るい色がいいと思うんだけど。  机の上にはえんじ色の分厚い本があった。何気なくページをめくる。きれいな文字がずっとつづられてる。日記みたい。読んでいいのかな?  あたしはちょっと悩んだけど、今は非常時という事で、最近のページをめくってみた。 『○月×日 うまくいった動物たちは、ポチ以外みんな逃げてしまった。 わしも、逃げるべきだろうか。だが、あの化け物を倒す魔法を完成させるまでは、この村から離れるわけにはいかん。 石になった仲間のためにも』  やっぱりこの村、あの蛇に襲われたんだ。  日記は毎日書いてあるわけじゃなかった。数ヶ月とんでたり、何か重要な事があった時だけ書いてあるみたい。ぱらぱらめくってると、 『大変な事が起きた』 という一文が目についた。 『○月×日 大変な事が起きた。 石になった手と頭は戻ったが。 もう一度一から作り直さねば。 しかしわしは美形じゃ。あらためて実感』  何これ。  結局大変な事って何?  てっきり、蛇に関する何かだと思ったのに。 「ミャー」
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加