6人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
猫が足にまとわりついてきた。あたしは椅子に座って日記を読んだ。
『○月×日
腕が石になってしまった。鏡を見ると、頭のうしろも石になっている。
道理で物忘れがはげしいはずじゃ。
それにしても、一瞬で石になった仲間も多いのに、わしはゆっくりじゃ。
おそらく魔法耐性と関係あるのじゃろう。
わし、大魔法使いで良かった。石化をとく薬を作るとしよう。問題は頭が石になったせいで昔ほど魔法や薬が思い出せんことじゃ』
えっ、石化をとく薬⁉︎
これがあれば、クレストは治るんじゃない?
『○月×日
ついに薬が完成じゃ!
試作品は自分で試し、大変な事になったが。
とりあえず動物たちで試してみよう。
どうやら、どこか一部でも壊れていると、なおらんようじゃ。
だが、治った鶏がないておる。ついにやったわい』
どこか一部でも壊れてるとダメなのか。クレスト大丈夫かな。
日記はだいたい十年前から書かれてた。それ以前に村は襲われたらしいけど、その後の日記の記述から大体の事は察する事ができた。
まず、二十年くらい前にパム村が蛇に襲われて、村人が石になる。
魔法耐性のあるこの日記のおじいさん?(自称大魔法使い)は腕と頭は石になったけど無事で、石化をとく薬を作ったらしい。
治った動物はほとんど逃げたけど、自分は蛇を倒すため残って魔法の研究中。ちなみにこの村に幕をはって、魔物から見えないようにしてるのもこの人みたい。
どんな人だろう。会ってクレストの薬をもらわなきゃ。
あたしの膝の上にいた猫が床に降りて、扉に歩いて行った。
「ポチ、帰ったぞ」
という声がした。誰?
あたしは日記を置いてキッチンの方へ行ってみた。
キッチンには少年がいた。猫を抱いてクッキーをつまんでる。あたしを見て、盗み食いを見つかったみたいに心底びっくりしていた。
「あの、お邪魔してます。留守だったので、勝手に入っちゃってごめんなさい。あたしはファリーナ、あなた誰?」
少年はあたしより少し年下みたいだった。淡い金髪に淡いグレーの瞳。かなりの美少年かも。
あたしはクレストの方がタイプだけど。
少年は大きめのローブを着ていた。地味な色。
「あの、この村にすむ大魔法使いって知ってる? どこにいるかわかる?」
あたしの質問に、少年は口をひらいた。
「わしじゃ。わしが大魔法使いのコールじゃ」
「は?」
あたしはまじまじと、少年の顔を見た。
「あなたが大魔法使い? 冗談言ってないで早く教えてよ。時間がないんだから」
少年はムッとしたみたいだった。
最初のコメントを投稿しよう!