魔法都市

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 森を抜けると、目の前にはグラフへ続く道と青い海が広がっていた。 「うわー! 海だ!」  クレストはひとりで海へと走って行った。 「お前ら、早く来いよ!」  振り返って叫ぶ。  コールがあたしをちらっと見て 「クレストの奴、子供じゃな」 といった。 「海、見たことないんじゃない?」  そうは言っても、あたしも内心興奮していた。家族で来る海と、好きな人と来る海とは全然違うから。 「待ってよ、クレスト!」  泳げないけど、波打ちぎわで水でも掛け合おう。楽しそう。  広い道を横切って砂浜へ着くと、クレストは服を脱ごうとしていた。 「な、なにやってるの?」 「泳ごうと思ってさ」 「水、冷たいわよ。それに、レディの前で服を脱ぐなんてどういうつもり」 「レディ? お嬢様のことか?」  ケンカうってるわ。クレスト絶対ケンカうってる。クレストの裸、ちょっと見たいけど心の準備ってものが。 「やめておけ、クレスト。このあたりの海にはビリビリクラゲもどきがでるぞ」  コールがやってきて言った。ポチが後ろからついてくる。ポチも砂浜に興奮中だ。 「びりびりクラゲもどき?」 「魔物の一種じゃ。見た目は弱そうじゃが雷の魔法を使う。いくらおぬしでも海の中では分が悪い」 「そうか、残念だな」  クレストは服を脱ぐのをあきらめた。 「水に入りたければ、グラフでプールに入ればよい」 「プール?」 「グラフには遊ぶ場所がいくらでもあるぞ。屋内プールも露天風呂も完備じゃ」 「そうか。プールもいいな。でもいつか、クラゲのいない海で泳ぎたいな」  あたしも一緒に泳ぎたいな。声に出す勇気はないけど。  浅瀬にはクラゲはいないらしいので、クレストはブーツを脱いで足だけ海に入ってた。猫のポチとたわむれてる。いいなあ、クレスト素敵。あたしとコールは砂浜で一人と一匹が遊ぶ様子を眺めていた。 「ファーはいいとこのお嬢さまなのじゃな?」 「リズっていう小さな街出身よ。貴族じゃないけど、一応お嬢様になるのかな?」 「クレストは旅の護衛か」 「違うわ。あたしがクレストの旅にくっついて来たの。いろいろあって」 「ファーはクレストに惚れておるのじゃな」  そ、そうはっきり言われると恥ずかしい。 「そうなんだけど、クレストは全然あたしのことなんて興味ないの」
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