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「確かに、あやつは難しそうじゃ。まだ子供じゃな、わしに言わせると」
「八十歳からみればそうかもね」
「ファーも子供じゃな。ういういしいわい。まだ恋愛したことないじゃろう?」
「いいでしょ。別に」
「クレストと恋愛する前に、わしと練習するのはどうじゃ?」
「……」
ゴーッと音がして、見ると頭上を円形の飛行船が通ってた。うわ、飛行船初めて見た。グラフに行くのかな。
「ロディール発、グラフ行きじゃな」
コールが言った。
「コールって美少年だけど、中身はおじいちゃんなのよね。しゃべり方もおじいちゃんだし」
「なんじゃ、不服か? しゃべり方くらいすぐに変えられるぞ」
あたしがコールを見ると、にやっと笑った。
「ファーお姉ちゃん、ロディールはとっても美しい街なんだ。白い建物が並ぶ中、海の青のような美しい色の王宮が建ってる。今度一緒に行ってみない?」
「コール、キャラ違う」
「ざっとこんなもんじゃ」
こ、混乱してきた。
クレストがこっちに走ってくる。
「なあ! 今の飛行船見たか⁉︎ すごいなぁ。いつか乗りたいな」
「あの飛行船、グラフに行くみたいよ」
「ホントか⁉︎ 乗りたい! 早く行こう、グラフに」
「わしら二人とも、おまえさん待ちじゃぞ」
コールはそう言うと、立ち上がってクレストの足を見た。砂だらけだ。
「ちょっと待っとれ」
コールは持っていた本をぱらぱらと開いた。あたしも興味津々で眺める。
ページには読めない文字や図形が書かれてる。コールがあるページを開いて呪文を唱えると、文字が空中に浮かび上がった。
「うわぁ」
「すごいな」
あたしもクレストも目を見開く。文字はくるくると回転し、解けて水の塊になった。バケツ一杯くらいの球形の水の塊がゆらゆらと浮かんでる。
「クレスト、足をださんか。ポチも一緒じゃ」
「コール! お前すごいな!」
クレストは目を輝かせながら足を洗ってブーツをはいた。ポチも水をかぶってぶるぶるしている。あたしも初めて魔法使いを見て感動してた。
「すごいわね、コール」
「今の魔法なんて初歩の初歩じゃ」
コールはそう言うとふんぞりかえった。
***
コールの魔法を堪能したあと、あたし達三人とポチはグラフに向けて歩きだした。道は海岸沿いに続いていて、馬車があたし達を追い越していく。角を曲がると、グラフが見えた。
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