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それに、かっこいい男の人と二人でご飯食べたことないから、なんだかデートみたいで嬉しい。ただ、そのお店の料理はあまりおいしくなかったけど。クレストはよく分からない赤い色の料理を注文して、満足そうに食べてた。
「ねえ、クレストは旅をしているの?」
「ああ。ジャイタから来た」
「ジャイタって鉱山のある街よね?」
リズの街からそれほど遠くない。
「ジャイタの鉱山で、傭兵をしてたんだ。魔物相手の」
魔物相手! それは強いはずだわ。魔物相手の傭兵は人間相手の傭兵や戦士とは格が違う。でもあたしには、クレストがそれほど強そうには見えなかった。若いし、年もあたしとそんなに違わない気がする。
「クレストっていくつなの? 魔物相手の傭兵って、おじさんばかりっていうイメージなんだけど」
そう言うとクレストは笑った。初めてみた笑顔に胸がきゅんとなる。
「おれは十八だけど、確かに傭兵の中では最年少だったな。傭兵はおっさんばっかりだったし鉱山も男だらけで、ジャイタはむさ苦しい街だったよ。楽しかったけどな。リズの街とは全然違うな」
男ばかりの街から来たのなら、彼女はいないかも。
「ねぇ、クレストはこれからどうするの? リズに滞在するの? どこか行くあてあるの?」
「特にあてはないが、首都に行こうとは思ってる」
「首都⁉︎ じゃあたしと同じだわ! 一緒に行かない?」
ちょっと……あたし、さっき会ったばかりの人に大胆すぎるわ。
だけどクレストの返事は素っ気なかった。
「それは無理だな」
「無理って、どうして?」
どうしても何も、あたし追われてるし素性も話してないし、当然といえば当然の反応なんだけど、なんだか振られたみたいでショック。
あたしが軽くへこんでるとクレストは真剣な表情で聞いてきた。
「なぁ、デザート頼んでいいか?」
「え、いいけど」
クレストは嬉しそうに変な色のゼリーを注文した。本当にに美味しいのかな、ここのお店のデザート。あたしには口に合わないんだけど。
「実は俺も追われてるんだ」
「えっ⁉︎」
「俺が追われてるのは、人間じゃなくて魔物だが。危険だから一緒に行かない方がいい」
あたしはしばらく何と言っていいか分からなかった。魔物?
「大丈夫なの?」
「街にいれば安全なんだ。まだ襲ってくる気もなさそうだし。ところでお前は、なんで追われてたんだ?」
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