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「あっ!」
追っ手の男の人、今度は三人いる。クレストを探すより早く見つかっちゃった。
***
リズの街のはずれにある大きなお屋敷。ここがあたしの実家。このあたりは大きなお屋敷ばかりが並んでて、リズの街のお金持ちの家とか、もっと大きな都市に住んでる人の別荘がある。
お屋敷の二階にある部屋で、あたしと父親はにらみ合っていた。
「お前というやつは! 結婚間近というのに勝手に屋敷を抜け出すとは。私の顔に泥を塗るつもりか!」
「塗るつもりよ! 前から結婚したくないって言ってるのに! どうして聞いてくれないの!」
「何が不満なのだ。お前の相手は貴族で大金持ちだし、第一父さんの親友だ。結婚すれば一生楽ができるんだぞ」
「それが何よ! せめて親友の息子ならわかるけど」
「確か息子もいたな」
「やっぱり今のは無し。とにかく結婚は嫌よ!」
「わがままを言うな。もう話は進んでるんだ。今さら断れんだろう」
最近父親の趣味の宝物コレクションが増えてる気がする。きっとあたしの結婚相手が贈ってきてるんだわ。だから断れないのよ。
「あたし、好きな人がいるの」
「嘘を言うな」
「本当よ。魔物専門の傭兵なの。すごく強いんだから」
「傭兵だか何だかしらんが、そんな貧乏な男と結婚なんて無理に決まってるじゃないか。生きていくには金と地位が大事だ」
ああ~もう。この父親には何を言っても無駄。
再びにらみ合ってると、ドアが開いてメイドのリリーが顔を出した。
「あの、旦那さま、お嬢様、魔物専門の傭兵って方がおみえですけど」
「えっ⁉︎」
「お前の恋人って奴か。父さんが追い払ってやる」
「やめてよ!」
あたしは父親の後を追って部屋からとびだした。
玄関ホールに多分父親が雇ったと思われる屈強な男達と、彼らに囲まれるようにして立っているクレストが見えた。
「クレスト!」
「やあ、お嬢様」
クレストは屈託のない笑顔を浮かべた。囲まれてるのに気にしてないみたい。
「このあたり、でかい家が多いから探すの苦労したぞ」
「お前、うちの娘に何の用だ」
父親がホールの階段を降りてクレストに詰め寄った。
「おじさん、お嬢様は結婚したくないって言ってるんだ。考えなおしてやれよ」
クレストのストレートな言葉を聞いてお父様はみるみるうちに怒りの形相になった。
「誰かこの無礼な男をつまみ出せ!」
「やめて!」
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