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屈強な男が襲いかかり、あたしが止めるのも間に合わず、クレストは男たちにあっさりと捕まってしまった。
「ファー、強いと言っても所詮一人では大人数にはかなわんのだ。世の中は金が大事という事がわかるだろう」
「お父様のばかっ! クレストは強いのよ! クレスト、どうして手加減するの」
「人間を相手にするのは苦手なんだ」
その時、男の一人が彼の荷物から何かを見つけた。
「旦那様、この男、こんなものを持っています」
「おおっ!」
それは大きな宝石の塊だった。色は紫に近い暗めの赤色。原石みたいだけどすごく綺麗。
「素晴らしい。なんと大きな宝石だ。君、これをどこで手にいれたのだ?」
「それには触らない方がいい。普通の石じゃないんだ」
「そんなことは見ればわかる。今まで一度も目にしたことのない美しさだ。君、これを私に譲る気はないかね?」
宝石を見て、父親の態度急変。宝石マニアなのは知ってるけど、あたしはちょっとうんざりした。
「それは無理だ。それはジャイタの鉱山にいた魔物が腹にため込んでた魔石なんだ。持っていると魔物が寄ってくる。封印するか、加工して聖石にしないと」
聖石はものすごく高い宝石の一つで、魔物をよせつけない効果がある。だけどその聖石が魔石からできてるなんて知らなかった。こんなに大きな魔石を見るのもはじめて。傭兵が持ってる魔石は砂つぶくらいの大きさで、小瓶に入って売られてるのに。
「譲る気はない。危険だ」
クレストはきっぱり言った。
「君がこれを譲ってくれたら、娘を君にやってもいい」
「ちょっと、宝石と娘とどっちが大事なのよっ!」
あきれてクレストを見ると彼は首を振った。
「石を譲るのは無理だ」
「君は石と娘とどっちが大事なんだっ!」
「お父さまもでしょ!」
「も、もちろんお前だよ、ファー」
何よその間は。
「だが、この宝石一つあればどれだけ楽ができると思う? 私のコレクションも充実だ」
そんなだから母親に愛想をつかされるのよ。
「君も娘の事が好きなら、悪い話じゃないことは分かるだろう? 別室でよく考えてくれたまえ」
そしてクレストは男達に引きずられて連れていかれてしまった。
「返してあげて。その石はクレストのものよ」
「どうせ鉱山で偶然拾ったんだろう。これを手に入れたらお前の結婚は考えなおしてやるから、お前もあの男を説得してくれ」
「最低っ!」
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