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「陽明、もっとキスして」
「ああ」
優斗の濡れた唇を舐めた陽明は、唇を笑みの形に変えた。ひどく幸せそうな微笑みに見惚れ、柔らかな髪に指をさし込む。
「好きだよ、陽明」
「俺が先に言うつもりだったのに」
「俺の勝ちだな」
額を合わせ、ふたりで笑う。目が合って唇が重なり、互いに抱きしめた。
「優斗が可愛い。まじで困る」
優斗にキスをたくさん降らせながら陽明は嘆くように呟く。言葉ほど困っているようではなく、髪をくしゃくしゃとかき混ぜて、その頭を胸に抱く。肌に口づけながら陽明の手が脇腹を撫でた。
「そこ、や……」
「えっろい声」
「うるせえな」
身体の火照りが醒めてくると、いつもの調子に戻ってしまう。もう少し甘い空気に浸っていたかったのに、と自身の強がりを残念に思った。
「そんな顔すんなよ」
「そんな顔ってどんな顔?」
鼻をつままれ、隣に横になった陽明を見つめる。肘枕で優斗を見つめる瞳が優しい。
「すげえ可愛い顔」
「なに言ってんだよ」
「ほら俺、優斗ばっかりだから」
たしかにそんなことを言ってふられていた、と思わず笑うと、陽明も頬を緩めた。
「優斗ばっかり、最高」
「俺だって陽明ばっかりだから」
「なに張り合ってんの?」
「うるせ」
互いに小突き合いながら、脚を絡める。しわだらけのシーツの上で戯れ、何度もキスをした。
(終)
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