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「いいだろ」
「いいだろって……」
にじり寄ってくる陽明から逃げるが、ベッドの上なのですぐに背が壁についた。
告白から一か月。きちんとつき合って、良好な関係を築いている。
それなのに最近どこか物憂げな陽明の様子が気になっていた。部屋に誘われてきてみたら、親は留守でふたりきりだった。特段気にせずいつものようにしゃべっていると突然迫られた。
「あのときとは違って恋愛感情がある」
「そ、そうだけど」
「俺は優斗を抱きたい」
「てか俺が抱かれる側なの?」
優斗の問いかけに陽明ははっきり頷いた。
嫌ではない。だが、そこに進む勇気がない。怖気づく優斗に、陽明は口角をあげる。近頃見ていなかった表情だ。
「怖い?」
「……っ」
つい言い返しそうになって、これは罠だ、と口を噤む。引っかからない優斗に、陽明は残念そうに眉をさげた。やはり罠だった。
「俺、陽明のこと嫌いじゃない、けど」
「けど?」
「……一週間待って。それまでに心の準備するから」
いきなりというのは無理だ。
「無理強いしたくないからいつまでも待つけど、早くしてくれると助かる」
「なんだそれ」
大事にされていることを実感し、心が温かくなった。嫌ではない、という意思表示のため、陽明に唇を寄せると受け入れてくれる。
一週間後が決戦のとき。
一週間どうしたらいいか考え、とりあえずイメージトレーニングと深呼吸を繰り返した。想像の中で陽明に抱かれる自分に頬が熱を持ち、落ちつくために深呼吸をする。その繰り返ししかできない。
どんなことをされるのか、と期待までする。そんな自分に、陽明が好きなんだな、としみじみ感じた。昨日受け入れてもよかったかもしれない、と思うほどに、想像すると身体が疼く。陽明と関係を持つ――そわそわと落ちつかないような、そうなることが自然のような、不思議な感覚だ。
幼い頃から知っている彼と、なりゆきで恋人になって、気持ちのないキスをして。それから本当の恋人になった。求めたとしてもおかしくはない。
だけど恥ずかしいな、と頬を両手で押さえる。体育は合同クラスが違うから一緒に着替えることはないのだけれど、部屋にいったらちょうど着替えているとか、そういう姿を普通に見ていた。
「……」
自分の腹をつまむ。
少しだけ頑張ろうか、と腹筋をはじめた。
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